個人事業主の経費

確定申告時期が近づいてきました。
記事を書こうかなと思っていたところ、参考になる動画があったので紹介します。

チャンネル紹介

オタク会計士ch【山田真哉】少しだけお金で得する

公認会計士山田真哉さんのチャンネルです。
とにかく情報が早いし考え方も私とよく似ているので、今後もたびたび紹介させていただくことになると思います。
自分で記事を作るより手っ取り早い、つまり手抜きです。

必要経費・家事関連費

社会通念つまり常識

あれれ、なんか厳しすぎるなと思っていたら、07:40あたりから種明かし。
社会通念、つまり常識で考えるということです。
同じような話はいつも言っていますよね。
この動画は個人事業主向けですが、法人もほぼ同様です。

11:40あたりの話は税理士あるあるです。
特に「友達は経費にしとる」と言われたら、お別れの時期を考えてしまいます。
この手の人とは長い付き合いはしません。

実は社会通念と常識は微妙に違う

しゃかい‐つうねん〔シヤクワイ‐〕【社会通念】
社会一般に通用している常識または見解。法の解釈や裁判調停などにおいて、一つの判断基準として用いられる。

デジタル大辞泉(コトバンク

税務調査の現場で調査官と税理士には当たり前と思える事柄が、納税者の方には納得できない場面がけっこうあります。
法の解釈による判断と常識による判断が微妙に違うからです。
動画で紹介されているベビーシッターの費用も典型ですが、他にもたくさんあります。
どうしてそうなるかと言うと法に欠陥があるからです。
刑事事件や民事事件での判決を報道で知って、立腹することはたびたびありますよね。
同じことが税務の世界でも起こります。
悔しいのは自分だけじゃない(課税の公平)と我慢してもらうしかありません。

また、税務調査官は公務員ですので公務員の常識と一般人の常識も微妙に違います。
接待交際費、福利厚生費、消耗品費などが税務調査で論点になりやすいのは、個人的支出が紛れ込みやすいからですが、公務員の常識との微妙な違いも関係しています。
国家公務員倫理審査会のチラシ

例示

○飲食(接待交際費)
 接待相手の記録が必須
 年間合計金額が少額ならば黙認もありますが、原則的には接待相手が不明な飲食代は経費にならないと考えてください。
 また、個人的支出が紛れ込んでしまうことも多少は避けられない(支出する人と経理する人の意思疎通の欠陥)とも思いますが、故意の混入がひとつでも発覚すれば不明な飲食代の全額否認も覚悟が必要です。
 常習的に故意に混入している場合は、税務調査云々の前に税理士が気づきます。(怒るで)

○家電製品や日用品(消耗品費)
 サラリーマンが立替経費を精算するために注意すべきことと同じです。
 社会通念ではなく常識ですね。
 領収書に明細がない場合は、裏にでも自分で書いてください。
 「但し ○○一式代金として」は明細とは言えません。
 概ね3万円以上の支出には十分に気を遣ってください。
 また、個人的な物と事業に必要な物を一緒に買うことも多くあるはず。
 なるべく領収書を分けて書いてもらってください。

○慰安旅行(福利厚生費)
 個人事業主(従業員なし)・法人役員(従業員なし、役員は親族だけ)→無理
 個人事業主(従業員は親戚)・法人役員(従業員は親戚、役員は親族だけ)→無理
  ※経費にしたければ得意先を誘えば交際費にできる可能性はありますが、得意先も親戚や友人だったりは完全アウト。
 従業員がたくさん参加すれば経費にはなりますが、福利厚生費ではなく給与として従業員に課税される場合があります。 
  国税庁タックスアンサー

立証責任と見解の相違

税法には曖昧な部分がたくさんあります。
税務調査官に「よくできています、まったく問題点はありません。」と褒めてもらうのは喜ばしいことでしょうか?
違います。

税理士でも経費にするかしないか悩むことは多々あります。
この経費は税務調査官に指摘されるだろうと予想される場合、安全策はハネることでしょうね。
しかし、それでは塵も積もれば山となる、けっこう税額が増えてしまいます。
対策は、税務調査官に納得してもらえる説明の準備することです。
その上で経費に入れます。

税務調査では数年前のことも質問されますから、記憶が曖昧だと答えられないことになります。
後で思い出せるように、領収書の裏にでもメモをしておくことも大事です。
それでも、どうしても税務調査官が認めようとしないこともあります。
これが見解の相違というやつですね。
このへんは(喧嘩ではなく)議論になります。

なお、経費性の立証(証拠を示してはっきりさせること)は納税者側の責任です。
説明もできず「ええんにしんさいや」は通りません。
また、その説明は税理士ではなく本人がするべきです。
税理士が専門家としての知識を武器に通らないモノも通す?
まぁ、成功することもたまにはあるでしょう。
しかし、調査官の納税者本人に対する信用度にどう影響するかは明らかですね。
逆に見解の相違による議論は主に税理士がするべきでしょう。
ここが専門家としての知識を発揮する場面です。

蛇足

「わしに任せておきんさい」と言って納税者本人を退席させるような税理士は信用しない方がいいですよ。
普段の納税者本人への税務会計に関する説明不足の発覚、税理士本人によるミスの発覚、怖いですよねぇ。
「税務調査があったけど、うちの先生に任しといたらあんまりやられんかった」
それ、誤魔化されてますから。
調査官も気持ちよく税務調査を終えられるように、納税者本人の信用度を高めるのが最も効果のある税務調査対策です。